StudioASPが取材した音楽スタジオ・インタビュー特集(全66回・2014年3月〜2019年10月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

音楽スタジオファイル Vol.21

新宿 HILL VALLEY STUDIO

HILL VALLEY STUDIO について
2013年11月オープンした、パンク・ロックの聖地として日本を代表するライブハウスの一つ『新宿ANTIKNOCK』の提携スタジオ。センスのよい外観とインテリアでANTIKNOCKとは違った一面を見せ、バンドマンから女性まで幅広い層に利用されている。ライブを行うバンドは当日のスタジオ利用料が最大半額になる「ライブ当時割引」サービスや、ライブハウスの兼任スタッフによるスタジオライブもサポート。
HILL VALLEY STUDIO お問い合わせ
HILLVALLEY STUDIO公式サイト
新宿区新宿5丁目18-20 ルックハイツB1
TEL:03-6302-1718
受付時間:10:00〜24:00
深夜:バンド練習予約可
ヒルバレーエスタジオ

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 HILL VALLEY STUDIO 編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

HILL VALLEY STUDIO店長 益永 嘉久氏
公式サイト - Twitter - facebook

本日は、新宿のライブハウスANTIKNOCK系列の音楽スタジオ、HILL VALLEY STUDIO店長の益永さんにお話を伺います。まずは、オープンの経緯から教えてください。

2010年に、当時ANTIKNOCKの店長がグループ会社から独立をして、単体のライブハウスとして経営することになりました。それから、ライブハウスだけではなく、バンド活動のサポートできる幅を広げようというコンセプトで、2013年にこのスタジオを作ることになりました。

スタジオ、ロビー等と明るい雰囲気で、ANTIKNOCKとは正反対のベクトルで驚きました。

ロビーや化粧室は社長の地元の先輩がやっている建築事務所『イトウケンチク』さんにデザインしてもらいました。とてもきれいな仕上がりになっていると思います。ちなみにANTIKNOCKも去年の2月に改装してかなりおしゃれになっていますよ

HILL VALLEY STUDIO利用者の主な客層、ジャンルというのはどのあたりですか?

プロアマ問わずオールジャンルです。ANTIKNOCKに出演してくださっているバンドさんはもちろん、学生さんや同人誌系(アニソン)の方も来ますし、海外のバンドさんが来ることもあります。18帖の部屋ではスタジオライブもちょくちょくやっています。他のスタジオさんだとスタジオライブを敬遠されるところもあるようですが、僕らはライブハウスの店員でもあるので、しっかりサポートできます。

それは頼もしいですね。「HILL VALLEY STUDIO」という、スタジオ名の由来を教えてください。

社長が映画のバック・トゥ・ザ・フューチャー好きなんです。映画の中に、HILL VALLEY(ヒルバレー)地区という場所が出てきて、そこから頂いたようですね。「この名前、渋くねえ?」みたいな流れでした(笑)。

益永さんがHILL VALLEY STUDIOの店長となる経緯について教えてください。

僕は21歳の頃にANTIKNOCKに入りました。10年以上前ですね。それから、ずっとANTIKNOCKでPAをやっていました。そして、独立後のスタジオ立ち上げの際に、「僕がやります」と立候補したのが始まりです。

益永さん自身がアンチノック育ちなのですね。しかし、PAとスタジオとでは大きく違いますよね?

はい。ずっとPAのエンジニアとしてやってきたので、スタジオ全般の基礎を作るのが大変でしたね。

とくに苦労したのは、どのあたりですか?

まずはスタジオを立ち上げるというのに、全くもってノウハウがなかったこと(笑)。さらに、設立が決まってから開店までの準備期間がほとんどなかった。機材から営業まで、すべてが手探り状態だったので大変でした。細かいことを言うときりがないくらいあるんですけど。

スタジオ構築の全てが任されていたんですね。

そうですね。とにかくわからないことだらけだったので、当時は社長と毎晩長電話していました(笑)。協力くれたスタッフのみんなにも感謝しています。

はじめてのスタジオ立ち上げで、ここまで作り上げたきたのはスゴイと思います。

ありがとうございます。でも、営業の面に関しては、思ったようにできませんでしたね。店番やレコーディングをしていると、外に出るタイミングもなくて、なかなか外とのつながりが増えなかったですね。

ところで、せっかくANTIKNOCKで10年のキャリアがあるPAはもうやっていないのですか?

今も、スタジオをやりつつANTIKNOCKでPAもやっていますよ。回数は減りましたけど、その分PAする喜びは増したと思います。

バンド練習していたリハスタのお兄さんがカッコよく見えた。

ANTIKNOCK育ちのスタジオ店長、益永さんについてもう少し詳しく、音楽の出会から教えてください。

中学三年生の時、ギターをやっていた友達に「バンドやろう」と誘われ、そのまま今に至ります(笑)。コピーバンドでしたが、ベースかドラムか悩んで、ドラムを選びました。

バンドでは何のコピーをやっていましたか?

最初はBRAHMANです。とりあえずやってみようということで、みんなが好きだった「See off」という曲をコピーしたんです。全然わからなくて、入りのサビだけは出来るんですけど、その後のツービートが叩けなくて終了(笑)。そんな感じだったので、簡単な曲からやっていきましたね。

高校進学後、本格的なバンド活動がはじまる?

福岡の農業高で、学校内でバンドが流行っている訳でもなくて、高校でもバンド活動も文化祭でコピーバンドをやったくらいです。でも、そのバンド練習で使っていたスタジオ店員のお兄さんがカッコよく見えまして、そのスタジオでバイトをはじめました。

なるほど、高校生時代からスタジオの現場には入っていたのですね。

高校卒業するまでの二年くらいスタジオでバイトをしていました。そのスタジオでのバイトが今の原点だったのかもしれないですね。その後、就職もせず地元でフラフラしていたんですけど、あまりにもやることがなくて(笑)、当時、東京の専門学校に来ていた彼女を追っかけて上京しました。

ロマンチックです(笑)。

ですよね(笑)。それで、渋谷のライブハウスの求人募集を見つけて、渋谷CYCLONEというライブハウスに入りました。

彼女を追っかけてきたら音楽の世界の入り口があった!(笑)。それでPAとも出会うのですね。

はい。ライブハウスの後ろで何かいじっている人がいるなあ、というのに気付いてはいたんです。で、「あの人が、PA卓をいじっているからライブが成り立っているんだなあ」と思いました。

裏方さんの魅力に気づいたと。PAはライブハウスの現場で覚えていったのですか?

ゼロから勉強しました。渋谷CYCLONEをはじめ、系列店の高円寺20000V(当時)、高円寺GEAR(当時)にも行き、最終的に新宿アンチノックにたどり着きました。それが10年前、2006年頃の話です。

新宿は音楽スタジオ激戦区エリアです。スタジオを取り巻く現状、経営的にはどのような感じでしょう?

やっぱり厳しくはありますね。一番手のスタジオとして利用してもらいたいんですけど、二番手、三番手になってしまっているというのが現状です。それと、HILL VALLEY STUDIOには三部屋しかありません。予約が埋まる時は埋まるんですけど、せっかく予約をもらっても全部埋まっていて、他店のスタジオに流れてしまう、という問題もあります。

なるほど。率直なお話、ありがとうございます。現在のところ、系列スタジオはここ一店舗なのですね。

そうですね、今のところここの一店舗だけになります。スタジオは五部屋あれば、取りこぼしなく効率よく回るとスタジオを経営されている方に聞いたことがありますが、三部屋なりの効率の出し方は常々考えています。

「シンプルな居心地のよい場所」を提供します。

大手スタジオなど、他店との差別化という面で打ち出しているコンセプトや経営方針があれば教えてください。

HILL VALLEY STUDIOとしては「シンプルな居心地のよい場所」というのを提供しようと思っています。そして、何より「スタッフ」=「人」ですね。現在は、ライブハウスあがりのPAエンジニアとレコーディングエンジニア経験のあるスタッフ三人でまわしているので、音に関しての専門的な話にも対応出来ます。

ミュージシャンのスタジオスタッフさんは多いですけど、エンジニアのスタッフというのは頼もしいです。

そう思います。裏方の職人技をもっていながらバンドもやっているので、オールマイティなスタッフ達です。

その他、HILL VALLEY STUDIOならではというサービスはありますか?

すべての部屋で録音が可能になっていて、三部屋同時に「せーの!」でレコーディングできます。老舗のレコーディングスタジオや、プロ用スタジオにはかなわないですけど、部屋鳴りもいいですしいい機材が入っています。平日昼間なら6時間2万円オールインワンという低価格で提供しています。

リハスタで録音できるというのは手軽で良いですね。利用料金もリーズナブルです。

それと、このあたりはライブハウスがたくさんあるので、『ライブ当日割引』というのを始めました。当日ライブをするという情報がわかるものがあれば、スタジオ利用料を割引するというサービスです。アンチノックだったら半額割引、他のライブハウスでも30%割引しています。

ANTIKNOCKはじめ有名ライブハウスが集まっていますからね。うれしいオリジナルなサービスです。

ライブ前のリハーサルとしての利用はもちろん、ライブ当日しか集まって練習ができないという、多忙なメンバーが多い(笑)バンドもあるようなので。

実は、ANTIKNOCK系列ということでハードコアな雰囲気を予想していましたが、実際には新宿にありながらレアすぎるほど綺麗で、多くの方が気分よく使えるスタジオだと思いました。

内装や外観のおかげもあってお客さんの層は幅広いです。分煙もしているので、女性の方にも気に入ってもらっています。主婦の方にも使っていただいていますね。来ていただいた方はみなさん満足していただけると思います。ママさんサークル等にもぜひ使って欲しいですね。まあ…、入れ墨だったり金髪だったりって方達も来ますが(笑)。

金髪モヒカンのバンドとママさんサークルが隣り合わせになることもあるのですね (笑)。

ロビーではオリジナルブレンドのコーヒーを出してますので、それも気に入っていただけたら幸いです。

僕も今いただいてますが、高級カフェのようなおいしさです。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年1月)

インタビュー特集一覧(バックナンバー)

バンドメンバー募集のメンボネット ミュージックジョブネット
新宿三丁目駅(最寄り駅)
東京メトロ副都心線・丸ノ内線・都営新宿線が乗り入れる「新宿三丁目駅」。HILL VALLEYスタジオはE1出口すぐ、系列ライブハウスANTIKNOCKはE7出口すぐ(明治通り沿い)。炎天下や雨天時でも地下通路を使えば、スタジオ〜ライブハウス間の行き来はもちろん新宿の各エリアへの移動が便利。渋谷・池袋からも副都心線で一本。
新宿ANTIKNOCK
新宿アンチノック
東京を代表するライブハウスの一つ。泣く子も黙るハードコアの聖地でもある。2015年に30周年を迎えBAR内装リニューアル、ALL NIGHTイベントCLUB KNOCKを始動。新宿三丁目駅E7出口から徒歩20秒。新宿新南口から約3分。
音楽スポット探索ガイド
新宿レッドクロス
クラブライナー
新宿・明治通り沿いに2003年オープンしたライブハウス。独創的な内装デザイン、秋間経夫(exマルコシアスバンプ)オリジナルアンプ完備。東新宿駅(大江戸線A1・副都心線B2)から徒歩2分、昭和シェル隣。
新宿RUIDO K4
クラブライナー
1972年「新宿ルイード」としてオープン(~1987)、旧原宿ルイード(1989~2007)時代をへて、歌舞伎町・新宿区役所通りに再臨したRUIDO系列のライブハウス。西武新宿駅・JR新宿駅東口から徒歩5分。
新宿ACB(アシベホール)
クラブライナー
歌舞伎町・花道通り「アシベ会館」地下2F。1968年に設立以来、旧コマ劇場裏の歓楽街で激動の昭和をくぐりぬけてきたライブハウス。現在は神戸三宮キングスクロスなどを運営するユニオンエージェンシー系列。
新宿LOFT PLUS ONE
クラブライナー
世界初のトークライブハウスとして1995年オープン、さまざまジャンルの知識・経験・関心をもつ人々を招きフリースタイルなトークライブを展開。歌舞伎町の新ランドマークサイン「アイラブ歌舞伎町」看板が目印。
新宿club SCIENCE
クラブライナー
歌舞伎町に2015年11月オープンしたキャパ300人のライブハウス。広い楽屋とシャワールーム完備。レーベルRejected Rabbit Records運営。 ローソン歌舞伎町二丁目西店の向かい。