StudioASPが取材した音楽スタジオ・インタビュー特集(全66回・2014年3月〜2019年10月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

音楽スタジオファイル Vol.24

STUDIO KEYBOARD

スタジオキーボード
STUDIO KEYBOARD について
1988年から続くリハーサルスタジオ。渋谷時代を含めると約40年の歴史をもつ老舗。全4室10帖・鏡張り。新宿駅・代々木駅から徒歩5分圏内と近く、使いやすい機材・低価格な料金設定で、学生さんや親子連れ、初心者からセミプロまで幅広く親しまれている。超高層ビル群に囲まれた鍵盤模様の三角ビルは、新宿駅南口エリア都市開発の波を乗り越えながら、豊かな音楽文化を育んできた音楽デルタ地帯。
STUDIO KEYBOARD お問い合わせ
スタジオキーボード公式サイト
東京都渋谷区代々木2-2-7
TEL 03-3370-5258
11:00〜28:00(電話受付10:00〜24:00)
STUDIO KEYBOARD

音楽スタジオの中の人に話を聞いてみた〜 STUDIO KEYBOARD 編

このコーナーは音楽スタジオでミュージシャンをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして、色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

STUDIO KEYBOARD店長 多田公正 氏

本日は新宿(渋谷区代々木)のSTUDIO KEYBOARD店長の多田公正さんにお話をお伺いします。まずはスタジオオープンの経緯から教えてください。

この辺り(南新宿エリア)が再開発される前、1988年頃からこの場所でやっています。当時は隣の敷地も含めた大きなスタジオでしたが、地上げされ続けて今のビルの大きさになりました。それが1992、93年頃です。さらに、その前に遡ると、渋谷の道玄坂にもスタジオがあったらしく、それを含めると40年ぐらいの歴史はあると聞いています。

相当な老舗スタジオですね。高層ビルに囲まれた三角地帯はそういう事だったんですね。

区画整理されて、1区画を切り売りしていたら、いつの間にか、ピザをカットしたような形になっていました(笑)。

STUDIO KEYBOARDの特徴について教えて下さい。

僕はミュージシャンあがりじゃないんですよ。だから、音楽的には第三者的な見方をしていて、業界の定番といわれる機材をラインナップして、オールジャンルに対応することにしています。初心者が難しくて使えないような機材はなるべく入れず、誰でも使える機材を選んでいます。

定番機材というのは初心者でも扱いやすいですからね。

これが例えば、ギタリストやドラムの専門家だったりするとツーバスを置くとか、SONORじゃないとだめだとか、こだわりが出てくると思うんですよ。吉祥寺とか東京の西の方に行くと、凝ったスタジオもあって、初めて行く方には敷居が高いんじゃないか、と印象を受ける所もありますよね。

個性的なお店は面白いですが、吉祥寺、立川、八王子あたりだと下がパチンコ店というとこも (笑)。

僕がびっくりしたのは、スタジオが風俗店の横にありました(笑)。うちは、キッズコーススクールもあるので、それだと親子連れのお客さんに利用してもらえないですからね。

さらにスタジオに金髪で眉毛ない人が受付にいたら、親子レッスンなんて出来ない(笑)。

そうなんです(笑)。初心者や親子連れの方にも安心して使って頂けるように心がけています。かと言って、スタジオのクオリティは落としたくないので、業界の標準以上の機材は揃えています。

学生でも無理なく、バンド練習を続けられる環境を具体化している。

新宿は音楽スタジオ激戦区です。差別化しているポイントなど教えてください。

低価格を維持しながら、アマチュアの方の練習が長続きできるような環境を整えています。学生さんがスタジオを選ぶ基準に、使いやすさの他に、値段(スタジオ料金)の部分が大きいと思うので、なるべく学生さんに無理のない予算内で続けられるようなスタジオを目指しています。

学生にとっては時間100円、200円の差は大きいですからね。

プロを目指している学生さんが、大学時代3、4年間頑張ってみる、それで何らかのきっかけや芽が出なければ諦める、という方が結構多いと思います。当店では、その限られた期間の中で、みっちり練習できるような環境を具体化しているつもりです。生の楽器は実際にスタジオで音を出さないとダメですからね。

最近はプロでも予算が出にくいくらいですから、この価格設定はうれしいのではないでしょうか。

週に何度か演奏されているようなセミプロの方も「最近のスタジオ料金じゃ(高くて)やっていられない」と言うんですよね。

最近はスタジオに入らなくなったバンドも増えたという話も聞きます。影響はありますか?

20年くらい前は平日の夜でもオールナイトでスタジオが満タンだった時代があったんです。今は深夜なんてほとんどお客さんは来なくなりました。若者の意識が変わったのか、夜遊びしなくなったのか。

確かに、昔は若い人といえば繁華街で夜遊びをしていた印象はあります。

歌舞伎町や池袋に行ってもあまり人がいないですからね。特に東日本大震災以後、客層も変わりましたね。深夜活動する方はさらに減りました。お客さんの意識が何かしら変わったんだと思います。なぜかと言われたらそれはわからないですが、肌で感じる部分です。

それでもSTUDIO KEYBOARD は場所を変えながら40年以上続いています。長く経営するコツを教えて下さい。

このスタジオについて、僕が知っている歴史は20年くらいですけど…。やはり、一番大きいのは立地だと思います。ここは幸いなことに独立したビルで、近隣からの苦情がほとんど来ないんです。というか、苦情はゼロですね。多少、音が洩れたとしても繁華街の一部ですので。

苦情がゼロというスタジオは初めてです!

個人で経営されているスタジオの中には、マンションの一室や住宅街の地下で運営している方もいると思うんですけど、そういう場所では、どうしても近隣に迷惑がかかっちゃうのではないでしょうか。その部分では、ここは近隣とのトラブルはないので、割とスムーズに運営できています。

音漏れの問題を抱えているスタジオは多いですから、それは大きいですね。

だから逆に、ある意味では、責任も重くなってきますけれども(苦笑)。売上が悪ければ、その原因は直接僕の責任になり、僕がクビになるわけです。近隣の問題があれば、そのせいにもできるんですけど、ごまかしようがないですね。経営能力を問われる場所です(笑)。

とても気になるのですが「インディアンフルート教室」というのは何でしょうか?

日本では聞き慣れない楽器だと思うんですけど、ネイティブアメリカンの民族楽器です。インディアンフルートは音色が優しくて癒しの効果があるのと、初心者でも簡単な曲であれば3日程度でマスターできるので、楽器に憧れてはいるけれど、一歩が踏み出せないような方に向いています。

はじめて楽器をさわる人には嬉しいですね。ギターのFコードで一体どれだけの人が挫折したことか(笑)。

そう思います(笑)。入門編の楽器として最適だと思います。講師は、インディアンフルートを普及させる活動されている尾崎元章さんという方です。彼はプロドラマーでもあり、ドラム教則本や幼児教育関係でも本も出している方です。

ドラムとインディアンフルートと幼児教育とは、とても幅広いですね。

そうなんです。音楽による子供の情操教育に取り組んでいて、お弟子さんも5、6人いらっしゃって、ドラムやインディアンフルートのイベントなんかも積極的に行っております。

スタジオの名の付くものはヘアサロン以外、全部やった(笑)。

多田さんがSTUDIO KEYBOARDに入る経緯について教えて下さい。

僕はキーボードに入る前まで、別の大きい会社のスタジオのチーフをやっていたんですけど、その会社が倒産した際に、当時の社長がこのポストを探して来てくれたのがきっかけです。

倒産した某大手スタジオ…。いつ頃ですか?

僕が1人でマネージメントするようになってからは10年程になりますね。僕は2代目の店長になるのですが、先代の頃は、スタジオで音楽教室の他に語学スクールなどもやっていた時期もありました。僕がマネージメントする時には音楽専用スタジオとして再スタートしました。

前職の某大手スタジオではどのようなお仕事をされていたのですか?

撮影、ムービー、音楽等なんでもある総合スタジオの会社で、音楽にかぎらず「スタジオ」の名の付くものは全部やりました。ヘアサロン以外は(笑)。音楽はその中のカテゴリーの1つだったので、ここにも割とすんなり入ってこれましたね。

スタジオに関するあらゆるスキルをお持ちなのですね。

何でもできると思いますよ。PAの建て込みもやったことありますし、撮影スタジオもやりましたし、スチール関係、ムービー関係、音楽関係全部やっていましたね。

それはかなり多忙な職場だったんじゃないですか?

そうかも知れません。昔は、アルバイトを含め4、5人でこのスタジオをまわしていたらしいんですけど、今までの仕事の経験上、ここは1人で管理できると思ったので、自分1人でやっています。

ハードな現場で鍛え上げられた賜物ですね。

まあ、向き不向きはあると思いますよ。僕は元々、夜勤とか1人でやるのが好きなんです(笑)。人のいない環境の方が集中できるんですよ。昔は「夜、シフトで入ってくれる人いませんか?」と聞かると、率先してやっていましたね(笑)。

ところで、多田さんご自身はバンドなどの音楽活動はやっていなかったのですか?

昔は多少はやっていました。でも、こういう業界なので、いつ家に帰れるかわかんないし、ほとんど毎日が夜勤の連続だったり、急にシフトを入れられたりで、練習もろくに参加できないので続かなかったですね。

仕事の方が忙しくて、バンドは自分からやめてしまった…?。

クビにされたというか、相手にされなくなったというか。その当時、携帯がなかったんで、「いついつ練習がある」というハガキが来るといった形でした(笑)。そもそも、人とスケジュールを合わせるというのが得意じゃなかったんです(笑)。

となると、ここを1人でやるのも苦ではないですね。

全然苦じゃない、というかパラダイスです(笑)。

天職なのではないでしょうか(笑)?

そうですね(笑)。一般的なオフィスみたいに、人がすぐ隣のデスクに座ってるような環境が好きじゃないんですよ。根が暗いんでしょうね(笑)。

とても明るい方という印象です(笑)。本日はユニークな話から裏話まで、ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年3月)

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T.G.P.ドラムスクール
T.G.P.ドラムスクール
尾崎 MOTO 元章氏が代表を務めるドラムスクール。新宿校をはじめ、東京、神奈川、埼玉、千葉に会場を展開。小学生から社会人、初心者からプロ志望まで、レベルや希望に応じた完全マンツーマンレッスン。スクール名の「T.G.P.」はドラマーに必要な3つの条件:Time Keeping、Groove、Positive Attitudeが由来。
公式サイト→ tgpdrumschool.com
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